定着とオンボーディングの重要性
採用活動は、内定承諾で終わるものではありません。入社後、候補者が実際に組織になじみ、能力を発揮できるようになるまでの受け入れ(オンボーディング)まで含めて、はじめて一つの採用活動が完結すると考える企業が増えています。求人媒体や人材紹介にどれだけ費用と工数をかけても、入社した社員が早期に離職してしまえば、採用活動全体の投資対効果は下がってしまいます。
このページでは、オンボーディングの基本的な設計の考え方、入社手続きを支える労務SaaSの特徴、そして採用データと労務データを接続して定着状況を把握する視点を整理します。採用手法の全体像から読み進めてきた方にとって、このページは採用活動の最終段階にあたります。求人媒体や人材紹介にかかる費用は、採用担当者にとって目に見えやすいコストですが、早期離職によって発生する再募集の費用や、受け入れ側の社員の対応工数といった見えにくいコストも、あわせて意識しておく価値があります。
オンボーディングの設計
オンボーディングの設計は、入社初日だけでなく、入社前の準備期間、入社直後の数週間、そして数ヶ月単位での定着支援という、時間軸に分けて考えると整理しやすくなります。入社前の期間には、内定通知から入社までの対応で触れたとおり、必要書類の案内や配属予定部署のメンバーとの顔合わせを行い、入社への不安を減らす工夫が有効です。
入社直後の期間には、業務に必要なアカウントや備品の準備、社内制度やルールの説明、そして日々の業務を教えるメンター役の社員を配置することが一般的です。特に、入社した本人がひとりで放置されたと感じる状態を避けることが重要で、定期的な1on1の機会を設けている企業も多く見られます。数ヶ月単位の期間では、当初の期待役割と実際の業務内容にずれがないかを確認し、必要に応じて業務配分やサポート体制を見直すことが、早期離職の防止につながるとされています。入社後の労働条件や労働時間の管理については、厚生労働省の労働基準に関するページで最新の制度情報を確認しておくと安心です。
【比較】入社後手続きを支える労務SaaS
入社が決まった後は、雇用契約の締結、社会保険・雇用保険の加入手続き、給与口座の登録など、労務面での事務手続きが発生します。これらを紙やメールでやり取りすると、採用担当者と労務担当者の両方に負担がかかるため、クラウド型の労務SaaSを導入して手続きを電子化する企業が増えています。ここでは代表的な4社を、事実項目で整理します。
| プレイヤー | 運営会社 | 主な機能範囲 | 料金体系の種類 | 無料トライアル |
|---|---|---|---|---|
| SmartHR | 株式会社SmartHR | 労務手続き・年末調整・タレントマネジメント等 | 月額制(プラン制) | あり(15日間) |
| freee人事労務 | freee株式会社 | 入社手続き・勤怠管理・給与計算・年末調整 | 月額制(従業員数に応じた従量制) | あり |
| ジョブカン労務HR | 株式会社DONUTS | 入社手続き・労務管理 | 月額制(ジョブカンシリーズ共通の料金体系) | 公式サイト参照 |
| マネーフォワード クラウド人事管理・労務管理 | 株式会社マネーフォワード | 人事管理・労務手続き・給与連携 | 事業規模別プラン制 | あり(1か月) |
2026年9月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。
SmartHR
SmartHRは、株式会社SmartHRが提供するクラウド型の人事労務システムです。入社手続きのペーパーレス化を起点に、年末調整、勤怠管理、給与連携、タレントマネジメントまで機能を拡張しており、労務管理クラウドの分野で長年にわたり高いシェアを維持しているとされています。料金体系は月額制で、15日間の無料トライアルで実際の機能を試せる仕組みになっています。詳細なプラン内容は公式サイトで確認してください。
freee人事労務
freee人事労務は、freee株式会社が提供する労務管理システムです。入社手続きから勤怠管理、給与計算、年末調整までを一つのシステムで一気通貫に対応する設計を掲げており、同社の会計・人事労務サービスとの連携のしやすさが特徴とされています。料金体系は月額制で、利用する従業員数に応じて費用が変わる従量制の構成を採用しており、無料トライアルも用意されています。
ジョブカン労務HR
ジョブカン労務HRは、採用管理システムの比較ページで紹介したジョブカン採用管理と同じ株式会社DONUTSが提供する労務管理システムです。ジョブカンシリーズは勤怠管理・給与計算・採用管理など複数のサービスを展開しており、同じシリーズ内でデータを連携させやすい設計になっている点が特徴です。具体的な料金プランは公式サイトで確認する必要があります。
マネーフォワード クラウド人事管理・労務管理
マネーフォワード クラウド人事管理・労務管理は、株式会社マネーフォワードが提供するサービスです。個人向け・中小企業向け・中堅〜大企業向けというように、事業規模に応じた複数のプランが用意されており、1か月の無料トライアル期間も設けられています。同社が展開する会計・請求書等のクラウドサービスと合わせて利用することで、バックオフィス業務全体を一つのプラットフォームで管理しやすくなる設計だとされています。
採用データと労務データの接続
採用管理システムで管理していた候補者の情報は、入社が決まった時点で労務SaaSに引き継がれることになります。この引き継ぎを手作業で行うと、入力ミスや二重登録が発生しやすいため、採用管理システムと労務SaaSの間でAPI連携や自動出力の機能が用意されているかどうかは、システム選定時に確認しておきたいポイントです。
採用時に取得した情報(応募経路、選考にかかった期間、内定承諾までの経緯など)と、入社後の定着状況(在籍期間、評価、退職理由等)を突き合わせられるようにしておくと、どの採用手法から入社した社員が定着しやすいかといった傾向を把握しやすくなります。こうした振り返りは、次の採用計画でどの手法にどれだけ予算を配分するかを検討する材料にもなります。あわせて、面接時に感じた候補者の印象や懸念点を記録として残しておくと、入社後に同じような傾向が見られた際の早期発見につながる場合があります。記録の保管や取り扱いについては、社内の個人情報管理規程に従って運用してください。
定着率の把握と振り返り
定着率は、一定期間内に入社した社員のうち、どれだけの人数が在籍を続けているかを示す指標です。算出方法に統一的な基準があるわけではないため、自社で「入社後何ヶ月時点」を基準にするかをあらかじめ決めておくことが実務上のポイントになります。よく使われる基準としては、入社3ヶ月・6ヶ月・1年といった区切りがあります。
定着率が低い場合、原因が採用時のミスマッチにあるのか、入社後の受け入れ体制にあるのか、あるいは配属後の業務内容や人間関係にあるのかを切り分けて検討する必要があります。退職者への退職理由のヒアリング(可能な範囲で)や、在籍中の社員への定期的なサーベイを組み合わせることで、原因の切り分けがしやすくなります。特定の採用手法や特定の媒体だけが原因と断定することは避け、複数の要因を確認したうえで、次の採用活動や受け入れ体制の改善に反映させることをおすすめします。また、定着率は部署や職種によって傾向が異なることも多いため、全社一律の数値だけでなく、部署別・職種別に確認することで、改善すべきポイントがより明確になります。
現場マネージャーの関わり方
オンボーディングの成否は、人事の制度設計だけでなく、配属先のマネージャーがどれだけ関与するかに左右されます。入社初日に業務の全体像と最初の3か月で期待する役割を口頭と書面の両方で伝えること、週に一度は短時間でも進捗と困りごとを聞く場を持つこと、社内の誰に何を聞けばよいかを示した連絡先一覧を渡すことは、どの規模の企業でも実践しやすい取り組みです。人事側は、マネージャーが忙しさの中でこれらを省略しないよう、チェックリストやリマインドの仕組みを用意する役割を担います。
労務SaaSを導入している場合は、入社手続きの進捗が人事とマネージャーの双方から見えるため、書類の未提出や手続きの遅れをきっかけに早めに声をかけることもできます。ただし、システムが整っていても、入社者本人が「相談してよい相手が誰か分からない」と感じている状態では定着にはつながりません。制度とシステムはあくまで土台であり、日々の声かけとフィードバックを継続する運用が、定着率の改善に直接効いてくる部分です。
よくある質問
オンボーディングは誰が担当すべきですか。
採用担当者、配属先の上司、そして日々の業務を教えるメンター役の社員が、それぞれ役割を分担して関わることが一般的です。採用担当者だけで抱え込むのではなく、配属先の部署を巻き込んだ受け入れ体制を組むことが実務上のポイントになります。人事・採用担当者は、関係者間の連携が滞っていないかを定期的に確認する進行役としての役割を担うことになります。
労務SaaSは中小企業でも導入すべきですか。
入社手続きが年に数件程度であれば、紙やメールでの対応でも運用できる場合があります。ただし、採用人数が増えるほど、電子化によって削減できる工数は大きくなる傾向があるため、無料トライアルのあるサービスから試してみることをおすすめします。既に会計クラウドサービスを利用している場合は、同じ事業者が提供する労務SaaSを選ぶと、データ連携の面で運用がしやすくなることもあります。
定着率が低い場合、まず何を確認すればよいですか。
退職のタイミング(入社直後か、数ヶ月後か)によって、原因の傾向が異なる場合があります。入社直後の退職が多い場合は、募集時の情報と実際の業務内容にずれがなかったかを、数ヶ月後の退職が多い場合は、配属後のサポート体制や業務量を確認することが出発点になります。
まとめ:サイト全体の振り返り
採用活動は、採用手法の全体像を理解したうえで、求人媒体・ダイレクトリクルーティング・人材紹介といった母集団形成の手法を選び、採用管理システムで応募者情報を一元管理し、採用広報や面接設計で候補者との信頼関係を築き、最後にこのページで扱ったオンボーディングで定着につなげる、という一連の流れとして捉えることができます。
どの手法・どのサービスが自社に合うかは、募集職種の専門性や社内のリソースによって異なります。当サイトで整理した事実項目を手がかりに、各社公式サイトで最新の情報を確認しながら、自社に合う組み合わせを検討してください。当サイトの運営方針については運営者情報・編集方針のページもご覧ください。
